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とても悪戯で茶目っ気のある眼つきで弓枝が愛無に甘えるような上目遣いで語りかけた。「ねぇ、愛武!私、グッチのバッグ買ったら、あと、お財布も欲しいんだぁ~!でも、それはグッチじゃなくてクリスチャンディオールとディルイヴィトンのエピシリーズのお財布がいいの・・大丈夫かなぁ!?愛武、お金足りる?」「うん、だいじょうぶだよ!また足りない分も付け足して、全部で300万持ってきたからね!」その時、弓枝の愛しいプリンスの愛武の美しい切れ長の流し目の中にお星様が無数にキラキラと眩いほどの光を放ちながら瞬いていた。

愛武は心から弓枝に深い愛情を感じ、どんな事でも積極的に協力して、いつでも最高の喜びを与えようと必死になっていたのだ。

「絶対だよ!やっぱりやめたって言わないって約束してね!」「うん、約束するよ!」「どんなことがあっても約束を果たしてね!」「うん、分かったよ、そうするよ!」

今日の弓枝が着ている、銀のラメ入りのヴェルサーチのスーツもとても決まっていたが、それと共に、過去にメイクが得意だというだけあっただけあって、フェイスの方も、まるでモデルのようにバッチリ決まっていた。なので、いくらちょっとした御曹司の愛武であっても、まだ若くて、その上元来面くいな為にこの美しい蝶のような弓枝の要求を撥ね付けることは決してできないのだった。

愛武はおしゃれな二コルの濃い水色のスーツを身に纏い、とてもなれた感じに手を差し伸べると―既にフィアンセである弓枝とは日本国内で何度もデートしていて腕を組むのは慣れていた―腕を組み弓枝を雄々しくリードした。

まず予定通り、手始めにグッチのバッグを買った。それから、クリスチャンディオールのショップに行き、そこでお財布を買ったのだ。グッチのバッグは、全体が黒でポケットが二つついていてベルトバッグになっており、7万円もするものだった。そして、クリスチャンディオールのお財布は、長財布(二つ折り)の紅色のエスニック レディスという名前の物だ。値段は、74,000円とこれまたものすごい高価な物だった。

愛武は、弓枝との約束どおり、それらを全て一気に買い物したのだった。そして、たったの一日でブランドのスーツやバッグやお財布に実に30万円も使ったのだった。これで、アメリカフロリダディズニー旅行のために用意してきた愛武のおこづかいは300万円から270万に一気に減ってしまった。

でも、まだまだ、おこづかいはタップリあるから、これから残りの5日間思う存分楽しむぞ!と愛武は心からそう強く誓った。

愛武はこの時、まだ弓枝に夢中で、その弓枝の洗練されたコンパクトボディの妖艶な美貌に逆上せ上がっていたために気づけずに、すっかり見過ごしていることがたくさんあった。それは、まず一つは、弓枝が愛武だけでなく他の異性とも普段から平気で頻繁に交流をしているという点と、その他には、買い物が何よりも大好きで、しかも、非常に高価な商品を好み―いや、ハッキリ言って高価な物以外は見向きもしないと言った方が正しい―しかも一流ブランド品だと特にご機嫌になるという強い習性のことだ。買い物が好きで一流ブランド品が好きだというのは愛武もとうに初めてのデートの時から気づいていた。

だが、自分以外の男とも頻繁に会っている、しかも、不特定多数の男と―さらに、付け加えれば、まるでそれらの男共をまるでメシアか何かのように扱っていることには未だに露とも気づいていなかったのだ。“弓枝は、僕だけの物だ!僕だけと付き合っていると思う”愛武は、心からそう信じきっていたのだった。それだから、弓枝と結婚を誓い婚約をしたのだし、これほどまでに我がままを言われても、その願いを全て叶えてやっているのだった。

今後、いや、この夢のように楽しい!?はずの(買い物)旅行の最中にもし、弓枝のその本性がばれてしまったら一体どういうことになるのか、想像だに恐ろしい限りだ。愛武のことだから、きっとその事実を知ったなら、ショックのあまり、一目を憚らず突飛な行動に走るに違いないのだ。

弓枝は旅行の最中、5日目まで特に変わった様子もなく、どこへ行っても陽気にハシャギ甘え上手だった。そして、買い物のショップを見つけると必ず買うわけではなかったが、物欲しそうな目でジロジロとウィンドウ越しにいつまでも商品を目で追いかけ、暫くその場から動かなくなるのが常だった。まるで買って下さいよと言わんばかりのポーズだった。

しかし、愛武が弓枝に最初の日の買い物以外にも、シャネルの8万円以上もするサンダルやフェラガモのローヒールなど高価な物を連日連夜買わされていたのは事実だった。だが、やはり、お金を持ってきていない訳じゃなかったので強くおねだりされると断りきれなかったのだ。

性交渉は若い二人にしては珍しくこの5日間、まったく無かった。とても、そういう雰囲気にならなかった。決して弓枝に魅力が無いとかそいう訳ではなかったのだが、婚前前なのでそのような破廉恥なことは出来ないという良識もあったのだった。

ただ、ベッドに入る時間になると弓枝が愛武にマッサージをしてくれと頼むで、仕方なく愛武は弓枝の肩や首筋や足腰など全身の凝っている部分を手の指でマッサージしてやったのだった。弓枝の体は結構固太りで、マッサージする指や手にも結構力が必要で、暫くマッサージをしていると手が痺れて来て次第に腕にまで痺れが及び最終的に疲れ果ててしまうのが常だった。愛武が自分のベッドに戻る時は、自分で自分の手や掌や腕を痺れが取れるまで暫くマッサージしないとならない状態だった。自分の手や掌や腕のマッサージが終わると疲れ果ててしまっていて、寝る時には額から冷や汗が垂れていた。そして、その頃には弓枝は一人グーグーと鼾を掻いてとっくに先に眠りに入っているのだった。鼾を掻いているのがもしブスだったら、とても耐え切れない光景だが、弓枝は大変美しいので、愛武にはそれすらも愛おしく感じられた。

そして、最後の6日目だったが、弓枝曰く、“最後の日だから楽しまなくっちゃ!”と言う事で、ディズニーランドで楽しかった、「ロックン・ローラー・コースター」にまた乗り、その後、ディズニーキャラクター達と一緒に記念撮影をしてから、また例の如く、買い物としゃれ込もうと言うことになった。

だが、何故か予定は急遽変更になり、ディズニーランドで「ロックン・ローラー・コースター」に乗った後、ディズニーキャラクター達と記念撮影が終わると、近郊のディスコに行こうということになった。

何故、急に?愛武はそう思ったが弓枝がそう言うのだからと思い素直に従った。大好きな買い物でなくてディスコに変わったのが少し意外だったのだ。

タクシーに乗って近郊のディスコに入ると、そこには沢山の見知らぬ外人や観光客がいて、もちろんその中には日本人らしい姿もたくさんあった。「ねぇ、奥に行こう!」弓枝に手を引かれるままに愛武はディスコの奥へと向かった。もちろん中は暗がりでやたらミラーボールがギラギラと眩い様々なカラーの光を周囲に放っていた。音楽もガンガンにかかっていて、ユーロビートや日本のジュリアナやマハラジャっぽい音楽にも似ていて大変乗りがよくて耳に心地良い。

弓枝の後を追って行くと、ダンダンと視界が開けてきた。それもそのはずだ。ディスコの隅のコーナーの方は明るい照明が付いていてその場所なら周りの様子がハッキリと見て取れたからだ。目の前に二人組みの男がいたが、あまり気にならなかった。弓枝が喉が渇いたというので愛武はすぐに機転を利かせてディスコの中のフリードリンクコーナーにオレンジジュースか何か美味しそうなソフトカクテルを頼みに行った。愛武が予定通りオレンジジュースを二人分持って弓枝の下に戻ると弓枝はさっき見た二人組みの片方の男と意気投合してしきりにはしゃいでいた。

「ねぇ!同じ日本なんでしょ!じゃあ、あそこ知っている?◎▲×・・そうそう、私もよく行くのよ~!」「じゃ、日本に戻ったらそこで、また偶然会えるかもね!」
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