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一人目の客はすぐに現れた。客の指し示す指の先の方向には、ちょっと古い感じがするが、まだ十分使えそう
なCDがあった。大きな汚れは目立たなかった。しっかりと透明なプラスチックのCDケースの中に商品は納まっていた。中が透き通って見えて、何やらエキゾチックな絵柄がCDにプリントされていた。

どんな音楽かは、今この場にCDプレーヤーがないので聴くことは出来ないのが残念だが、―おそらく邦楽の可能性が高いだろう―客はCDの中身の曲を確かめようとする気配も見せず、ソソクサトCDを手持ちバッグに仕舞い込んだ。無論、それと殆ど同時に紙で貼り付けてあった商品代金と同等の金額をフリーマーケットの主の弓枝に手渡していた。金額はピッタリ、500円だ。正確に言うと500円硬貨一枚を差し出したのだ。手馴れた動作でその500円硬貨を素早く金銭入れに投げ込んだ。―あとで全額計算してまとめるのだ―

出会いで知り合ったお手伝いの男は弓枝がCDを売っている間にトレーナーやブーツを売るのに成功していた。これはすごい業績だ。

ゴザやシートを敷いてその上に色んな商品をなるべく見栄え良く陳列するだけで商品がこれほど飛ぶように売れると言うのは、生まれてから初めてではなかったが―母方の田舎の実家や親戚の商売をしている家ではそういうのが当たり前だった―目の前で間近に見るとやはり、すごいと言うしかないだろう。ドンドン、売れていく、嬉しい悲鳴が沸きあがったのは言うまでもない。

「弓枝ちゃんって、フリーマーケットの才能があるね!」「そんなでもないけど、何故か、飛ぶように売れるね・・」「商品を陳列するだけで売れると言うのは得意技ですな」「弓枝ちゃんは、きっと商才があるんだよ、商売の道に進むといいよ!」「うん、でも、もう愛武と婚約しているから、愛武が商売をするんだったら一緒にするけど・・それ以外はわからないや・・・」「じゃあ、ご主人が、愛武が、商売をするのだったら、するってこと?こんなに向いているのに商売をしないなんて絶対に勿体無いよ!」「分かったよ!楓ちゃんやみんながそう言うなら、愛武に今度あった時、将来、商売の店を持てるようにお願いしてみるよ!」

そういう会話をしている間にも、フリーマーケットのゴザやシートの上の商品は次々売れていっていた。主にお手伝いの男が客の相手をしていた。生まれつきの天分というべきだろうか、見る見る間に商品は売りつくされ、フリーマーケットの売り上げは一気に上がっていった。

弓枝というこの女性と共に行動をしていけば、一生お金や物に困ることはないだろう。そして、それと同時に住まいや食物に困ることもないと思える。物質に関することで困ることはないだろうということだ。彼女の全身から物質や金銭を引き寄せるオーラのような物が沢山、溢れ出しているからだ。彼女について行けば、まず食いっぱぐれることはないだろう。

ただ、これには“ただし”の条件がつく。それは何かというと、二人の仲が順調で爽やかに礼儀正しく関わっている間はいいが、そこに特別な情の絡み合いや私利私欲の圧力や負担が掛かってくるとその限りではないと言うことだ。

では、上でお話した、「特別な情の絡み合いや私利私欲の圧力や負担」とは具体的にどのようなことを指し示すのだろう。

それは、例えば、自分の気分の赴くままにあれが欲しいとかこうしたいからあれを購入したいとふと思った時、それが、たまたま弓枝にとってまったく必要でなかったり、馬鹿らしい下らない存在だと思われている物だと、購入の申し入れを即座に却下されると同時に次第に剥れてご機嫌斜めになり、酷いと軽い―場合によっては重い―暴力行為に至るケースも出てくるということだ。

それほど、物事に対する価値観の白黒が日頃からハッキリとしており、必要がないものだと感じるとどんなに多くの収益を日頃上げていようが見向きもしないし、コンビを組んでいたり仲間であるものに対して少しも施そうとしないという手厳しさを持ち合わせていた。

食べ物も、本当に最低限度、やすいインスタントそばやうどんならありだったが、きちんとした物になるとすぐ、得意の誰かに奢らせようというのがいつものスタイルだ。

つまり、今までお話したフリーマーケットでの売り上げの天才ぶりも、決して鵜呑みにして期待しすぎてはいけないということなのだ。世の中そんなに甘くはないのだ。自分がいるから、自分のおかげで売れていると思っている以上は、その売り上げを他人の楽しみや喜び事に投資するということはまずなかった。

だが、そんな反面、ボランティア寄付金などは好きだという意外な一面もあった。世界的に認められた場所で善行をするのは本人にとって勲章にもなるから好きなのだろう。目立ちたがり屋という訳でもないだろうが、一時はタレントに真面目になりたいと考えた時期もあったので世界的に素晴らしい人と称えられることにはいくらでもお金を投資するのだろうと思う。

だが、彼女が女性的な優しさや潤いがまったくない干乾っびた女性でないことだけは、ここでハッキリさせておこう。見た目、目が常にウルウルとしており、希望に燃え立つようにホッペがホンノリ薄いピンク色に輝いていた。ハッキリ言えば容姿だけは完璧に人受けが良かった。愛され上手と思える容貌だと思う。そのため、何人に甘えようとも殆どその要求を呑んで貰えていた。男性だけでなく、女性も彼女の大きな甘えを暖かく全身で受け止めていた人達は過去から現在において非常に多た。

そして、決まって最後はみんながみんな草臥れ果て煤け、哀れでもう一度頑張ればとは、とても言えない状態に陥っていた。もしも、そこで“もう一度頑張れば”と言ったなら、それはある意味、死ねば・・・と言っているのと同じだからだ。

でもその過去から現在までのみんなの苦しみも次第に解放に向かっていくのは明らかだった。だって、楓の遠い親戚でもある幼馴染の親愛なる星のプリンスの愛武が弓枝のフィアンセになって全てを背負う決断をしたのだから。あとは、大船に乗ったつもりで全てのことを愛武に任せて行けばいいのだから。

結局フリーマーケットは短時間で殆ど売切れになってしまい、大盛況で大成功だった。正に万々歳だ!弓枝の商売の神様と言えるべき恐ろしい才能をここに垣間見たと思う。―確か、お手伝いや楓に報酬は一銭もなかった―このような商売だけの爽やかな関わりだけで後は背負うことももうないのだ。今までの辛いことや悲しいこと苦しみも全て終わり、新しい、弓枝と愛武の世界が開けるのだ。後は、彼らの前途をじっくりと見守って行く役目が待っているだけだ。

楓は二人の結婚式には是非、参加したいと心から思っていた。そして結婚式の会場で心からの祝辞を述べ、二人の前途や未来を祝い称えたいと思った。フリーマーケットの帰りのお手伝いの男が運転する軽トラックの中でみんなは寛ぎ談笑した。

だが、弓枝には報酬が入ったが他の二人には一銭もないというのは何か府に落ちない話だった。

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