店員が靴棚の一番上のその又上の引き出しの扉を開いてそこから靴が入っていると思われる、少し大きめの箱を取り出した。そして、その箱の蓋を少し開いて中を確認してから弓枝の方に、その箱を手にして戻って来た。

「ああ、ちょうどありました!お客様、これです!」そう言ってから店員は素早く箱の中から弓枝がさっき見ていた物と同じデザインのウェスタンブーツを取り出し、弓枝に差し出して来た。

「どうぞ、サイズが合うかどうか、お確かめ下さい!」「はい、どうも」

弓枝はすぐ、そのブーツを受け取るとマルイの婦人靴店コーナーなの大きな姿見のサイズの細長い鏡の前で専用の黒い鉄パイプ作りの小さな椅子に腰掛けてブーツを実際に履いて自分の足のサイズと合っているか確かめた。

今日の弓枝の格好はクリーム色の白いモコモコが付いたハーフコートを羽織った下にクリーム色の長袖のトップスと焦げ茶のキュロットだ。今日、履いていた焦げ茶のショートブーツは椅子の隣に脱ぎ捨てていた。

履いてみた結果、そのウェスタンブーツは弓枝の足にピッタリだった。元々、弓枝の足のサイズは普通は24・5ｃｍなのだが、硬い皮やエナメルが素材のものだと締め付けられる割合も考えて25センチなど少しだけ大き目の物を選ぶようにするとちょうどサイズが合ったのだ。そういう意味では見た目よりか大柄なタイプだとも言える。顔立ちが柔和で美しい分、得をして見られるタイプだと思われる。

「あの、これ、取り置き、お願いします!」「この商品は、取り置きするなら、幾らか内金を頂く事になりますが、よろしいでしょうか?」「えぇっ!内金がいるんですか？他の売り場では、内金なしでも取り置きしてもらえましたけど?」「申し訳ありません!お客様、この商品は高価なものですので、どうしても内金が必要となってしまうんですよ!他のコーナーとはうちはまったく別会社ですから、やり方は一緒じゃないんですよ!」

そのウェスタンブーツの値段は、税込み59,990円で、お洒落な柄入りの黒地でつま先部分が蛇革模様になっている物だ。

「ええ、そうなんですかぁ～!?」「はい、申し訳ありません!」

その時、弓枝はあと一時間もすれば、愛しい婚約者の愛武が、此処に来る事を思い出した。

「あ、あの、一時間後に私のフィアンセが此処に来る事になっているんですよぉ～!私がフィアンセにお願いして内金を入れて貰うようにしますんで、それまでその商品を取り置きしてもらえませんか?」「はい、こちらの商品はお値段が少し張りますので、直ぐには売れないので大丈夫ですよ!心配ならあと一時間だけ待つのでいいなら取って置きますので安心して下さい!」