結局その日はそのまま二手に分かれて家に帰ったのだった。
家路を辿り、自分の部屋に着くと楓は、洋服を部屋着に着替え、それから一階の風呂場の隣にある洗面台に行きうがいをして、手を洗った。
それから、また、自分の部屋に戻るとすぐに外出着から部屋着に着替え、自分の机の前の椅子に腰掛けた。
それから「はぁ~~っ!」と溜息を漏らしてから机の上に肩肘を付いてその手を傾けた頬に添えた。
その次に楓が取った行動は、机に備え付けてある細長い小さな鏡に向かって一人ニヤニヤとしたり、“むっ”とした表情になって睨めっこしたりして無邪気にフザケタ。
そして机の上にある専用の整頓された本棚から同じ色の薄緑色の分厚い本のような日記を取り出した。それは紛れも無く誕生パーティーで愛武からプレゼントで貰った物だった。
まず、日記の鍵を開けると、ページをパラパラと捲り、今日書く、まっさらなページを開いた。次に、さっそく、そこにこう書いたのだ。
『今日はすごく怖かったです!だって弓枝ちゃんが、男の人の顔を引っ掻いて血だらけにしちゃったから・・私、本当に怖くて、怖くて、もう、心臓が止まりそうでした!しかも、その人と“むじんくん”に行って、そこで10万円を相手の男の人に下させて、それを弓枝ちゃんが無理やり・・・ああ、考えただけでも気が変になりそうです!そして、そして、それだけゃなくてそのあとも4人も男の人と短い時間に立て続けに会って、それぞれから一万円、2万円、一万、一万と、弓枝ちゃんがおねだりして・・・いいえ、本当は脅し取ってました!ハッキリ、私この目で見てしまいました!もう何かも信じられない気分です!あの時の弓枝ちゃんはきっと何かに取り憑かれていたと思います。そう悪い自縛霊か何かに!きっとそうです!そうに違いありません!今日の事は悪夢だと思って誰にも話さないで胸にしまって置こうと思います。○月×日○曜日20時20分』
それだけ書き終わると楓は部屋着の水色のトレーナー姿で大きく両腕を頭の上より高く上に真っ直ぐげて大きく伸びをした。
お金を脅し取ったのは、最初の一人目の顔を弓枝が顔を引っ掻いた相手だけだったがその時の印象があまりに強かったので、その後も脅し取っていたような表現の文章を日記に書いてしまったが、“まっ、いいか、大して内容が変わる訳じゃないないから”と思い、楓は敢えて日記の文章の修正をしなかった。
すると暫くして「ふぁぁあ~~!」と自然に欠伸が漏れてきたので、思ったより疲れているなと感じた。
その原因は、短い時間の行動だった故に肉体的な疲れでは無くて精神的な疲労による疲れの方が大きいと思われた。
「今日は、少し早いけど、何だかすごい疲れちゃったから、もう寝ようかなぁ~!」そう呟くと間もなく楓は自室のベッドに入ったのだった。まだ21時前の事だ。
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