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―そして、何日か経ったある日の夕暮れ時の事だ―

弓枝が近所のマルイで、愛武と共にアメリカフロリダディズニーに行く為、持って行く物で自分の所持品では足りない物を買い物する為に良い物はないかと商品をずっと見て回っていた。珍しく、連れはなく一人だった。

しかし、ここで思うのは、あんな阿漕な事をして―この間、楓といた時のように出会い系で呼んだ男の人の顔を引っ掻いた事だ―よくいけしゃあしゃあとマルイで堂々と買い物が出来るものだ。

この間の男がもし来たらどうするのだろうか?弓枝には、そんな事、絶対ある筈が無いと云う自信があるのだろうか?

だが、皆さんもご存知のとおり世の中そんなに甘くはないのだ。いつ、何処で何が起こるか分からないから世の中は恐ろしいのだ。

なので、この間の男が突然、今弓枝の目の前に現れても、ちっとも不思議ではないのだ。それなのに弓枝は平然とした真顔で近所のマルイで買い物の商品選びをしていた。その姿からは少しもあせりとか恐怖という物が感じられないのだ。それは、絶対にどんな状況になろうとも“勝てる!”という自信からなのだろうか?弓枝は、きっと心臓に何本も毛が生えているに違いない。

いや、絶対にそうだと思う!私は神にかけて誓う事ができる。

暫くして、何か気に入った商品が見付かったらしく弓枝がレジに向かっていった。弓枝が店員に声を掛けた。「あのぅ、これ取置きお願いします!」「あっ、はい分かりました!それでは、こちらの用紙に必要事項をご記入お願いします!」しかし、買い物ではなく取置きらしかった。

レジの店員に渡された取置に必要な用紙に必要事項を記入し終わると、弓枝は、何かを思い出したように手持ちのお洒落な黒いバッグの中から携帯電話を取り出し、どこかにダイヤルする為に小さな数字のボタンを一つづつ徐に指で押し始めた。

それから数秒後に愛武の携帯電話の着信音がとても感じの良い小気味良いリズムで鳴ったのだった。自室の机の上に置きっぱなしの携帯電話を素早く取り上げると愛武は受話器に直ぐに話しかけた。

「はい、もしもし、僕です、愛武です!あっ、その声は、弓枝ちゃん!やあっ!どうしたの、こんな時間に?」

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