愛武の家に着くと弓枝は、玄関から少し進んだ所の応接間にすぐ通された。そこには、臙脂色の長袖のセーターに濃いグレーのスラックス姿の愛武の父親の姿があった。口元には海外製の巻きタバコを銜えていた。その煙を一息吸って吐くと、現れた二人の前に顔をしっかり向けた。そして応接間の中央にあるテーブルの前のゆったりとしたソファに深く腰掛けた状態で愛武と弓枝を温かい笑顔で迎え入れた。
「おお、お前か愛武、隣にいるのは、昨日話していた子かな?」「うん、父さんそうだよ!この子が僕の未来のお嫁さんになる人だよ!」「そうか、実にお前にふさわしい綺麗な子だね!」「有難う、お父さん!「初めまして、愛武のお父さん!弓枝です、どうぞよろしくお願いします!」「いえいえ、こちらこそ、昨日から息子に、まだ一回しか合っていない子と結婚を決めたから私にどうしても紹介したいとうるさく言われた物でね、楽しみにしていたからお会いできて嬉しいですよ」「愛武のお父さんって、ダンディーで素敵だねぇ!ファンになりそう!」
弓枝の瞳が憧れ色にキラキラと輝いた。
「おやおや、そんなに褒められたら、焼餅を焼かれて息子に後で怒られるなぁ、困ったなぁ、はっ、はっ!」愛武の父親は満更でもなさそうに頭の後ろを左手で摩りながら照れ笑いをしてみせた。
「愛武はそんな意地悪じゃないよねぇ、愛武!」「うん、大丈夫、弓枝ちゃんの事信じているから・・」愛武が少し真剣な表情でそう言った時、応接間の扉がギギィッと音を立てて開いた。
すると手に持ったお盆に3人分のお茶の入った湯飲みを載せてエプロン姿の愛武の母親が登場した。
「あなた、それから愛武もお茶を入れましたよ、どうぞ!あらっ、随分と可愛いお嬢さんね、この人があなたの話していた愛武の婚約者かしら?」「そうらしいよ」
愛武の母親はお茶をテーブルの上に3つ全て置き終ると愛武の方にしっかりと向き直ってこう言った。
「あんたが選んだお嬢さんだけあって本当に素敵な子だねぇ・・お前も見る目があるね」「有難う、母さん、僕、彼女の事、本当に愛しているから、いづれ結婚したら、ここに一緒に暮らしてもいいでしょ!」「そりゃぁ、母さんは構わないけど・・」「父さんも、OKだよ!お前にピッタリで素敵な奥さんになると思うよ、我が家の一員としては大歓迎だよ!何しろ大事な息子が選んだ奥さんだからな。」
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