その百貨店の8階にはレストラン街があり、その中にちょうど“日本そば”の店舗があったので、そこへ愛武と弓枝は入る事にした。銀座に本店がある清月堂本店という店だ。
そこで弓枝は予定通り、そばを頼んだが、ただのそばでは無くて“茶そば”を選んだ。愛武は、限定メニューの鶏の照り焼き丼セットを選んだ。デザートにはミニみつ豆が付いていた。
店員にオーダーをしてから40分くらいして食事が運ばれて来た。
店の席について食事が来る前も、そして食事が始まってからも、愛武と弓枝は、少女漫画とか恋愛小説に出てくる恋人同士のように仲睦まじそうに楽しげに談笑していたのだ。それは、そうだ、もうすぐ二人は手を取り合ってアメリカのフロリダディズニーの旅行に行くのだ。箸が転んでも可笑しく楽しい状態なのは当然だ。
「ねぇ、愛武、私ね、今から食事が終わった後どんな話をされるのか楽しみで仕方ないし、とっても気になるの」「うん、そうだろうね、ごめんね、僕が拘っているばかりに今すぐに話す事が出来なくて、でも二人にとってとっても大事で良い話だから、それは心配しないでね!」「うん、分かってる愛武が私が不安になるようなお話しをする訳がないもの、今から食後の話、楽しみにしているね」「有難う、そう言ってくれると、とても嬉しいよ、僕は、いつも君と幸せになる事しか考えてないから、いつでも君は僕の言う事を信じてくれれば、それで良いのだからね!」「うん、分かった!弓枝ちゃん愛武の事大好き!」「僕もだよ!」
その時、坊ちゃん刈りの貴公子愛武のザマス風伊達メガネがいつもの様にいかす感じでキラッと光ったのだ。
気づけば愛武は弓枝の言葉に感動と興奮のあまりテーブルに置かれていた弓枝の手を己の右手ですぐさま掴むとぎゅっとキツク握り締めていた。弓枝の瞳が金平糖のお星様の様にキラキラと輝いた時、愛武の瞳にも同じ様な光が瞬いていた。まるで二人はメルヘンの世界の恋人同士だった。少し時間が止まってから、また二人は食事を続けた。
他愛無い話をしながら食事が終わるとテーブルにタイミングよく置かれたお茶をすすりながら弓枝が愛武に尋ねた。
「ねぇ、食事が終わったよ、さっそく聞きたいんだけど、お話って何?」
「うん、言うよ、それは、弓枝ちゃん!ぼ、僕と結婚して欲しいんだ!」
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