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約束の時間ピッタリくらいに弓枝の実家ビル前に着くと、愛武は直ぐにビル一階の入り口から階段を上って行った。

そして弓枝の部屋がある二階に着くと、勢いよく扉を開けて「こんにちは!愛武です!弓枝さん、居ますか?」と大声で叫んで弓枝を呼んだ。すると少ししてから奥の方から「入ってきて!」と弓枝の声がした。

愛武は、今日これから弓枝に言おうとしている事を考えながらドキドキわくわくしながら扉の奥へと足を踏み入れた。無論、愛武が弓枝に言おうとしている事は、“プロポーズの言葉”だった。初めて会った時から今日まで愛武は、一時も弓枝の事を考えなかった時はなかった。心の中にはいつも燃え上がるような熱い弓枝の思いが溢れているのだった。

愛武の今日の出で立ちは黒いタキシード風の洒落たスーツに蝶ネクタイと実にダンディーな正装に威儀を正していた。勿論、今日のこの愛武の弓枝への“愛の証”を立てる為の記念すべき日の為にバッチリと決まった格好を整えて来ていたのだった。

「おお!カッコいいじゃん!」奥の部屋の方に入って行くと出会い頭に弓枝が愛武の立派な出で立ちを誉めそやした。「どうも、有難う!何か照れるなぁ~!」愛武が真面目にそう言うと弓枝は奥に来るように手招きをした。「何で今日はそんなにカッコいい服装なの?何かあるの?」弓枝が少し疑うような眼差しで愛武を見詰めると愛武はタキシードの蝶ネクタイの両端を両手の指で摘んでキュウッと横に引っ張って形を整えて牽制のポーズを取った。

「実は今日は君に大事な話しがあるんだよ!だけどその話はここじゃなくて、後で食事しながら話したいな!」「今、話すのは無理なの?そういう言い方されちゃうとスゴク気になるんだけど!ねぇ、今話せない?」「でも、やっぱり、とても大事な話だから、きちんとした場所で話したいんだ!分かってくれよ!」

愛武が弓枝にそう言った時に、また例の如くザマス風伊達メガネがいかす感じでキラッと光ったのだった。

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