何と、愛武は、まだ弓枝と一回しか会った事がないと言うのに結婚を希望する程にその心中は真剣その物に燃え上がっていたのだ。もはや、愛武の心の中には弓枝しか住んでいないと言っても過言ではないだろう。弓枝と出会ってからのこの数日間に愛武の心の中に芽生えた赤い稲妻のようなエナジーの嵐は、もう誰にも止めることは出来ないのだ。
「父さん、僕、もう彼女なしでは生きていけないよ!彼女の事、死ぬほど好きなんだ!」愛武はそう言っている最中ずっと両手の拳を強く握り締め顎の下あたりでブルブルと震わせていた。顔は綺麗なピンク色に火照っていた。
「おぉ、おぉ、そうなのか、それほど好きなのか・・よしよし、分かったよ、可愛い息子の頼みだ!父さんが何とかしてやろう!」「本当に!!有難う、父さん、じゃあ、お願いしていいね!嬉しい、父さん本当に有難う!」「何を言っているんだ!父親として当然の事だよ!息子の未来の花嫁候補の為に必要な出費は何とかするのは父親としての責任だと思ってるからな、それにお前のそんなに真剣な目を父さんは初めてみたぞ!これは、何とかするしかないだろう!」「うん、じゃあ、よろしく頼むよ!」「じゃぁ、聞くが、幾ら入用なのかな?」父親は、ジッと愛武の顔を見据えて、そう厳かに問い正した。
「えと、・・それは、婚約指輪だから、やっぱり100万円はするかな・・・」「おぅ、おぅ、そうか、100万と言わず、300万でもいいぞ!大事な息子の一生の問題だからな!」「ええ、父さん!そんなにいいの?」「遠慮するなよ!一世一代の問題だ奮発してやる!」「わぁ~父さん、僕、頑張るよ!」「指輪を買う日が決まったら言いなさい!直ぐに用立ててやるぞ!」「だったら、サッソクだけど明日は駄目かな?明日、彼女に会うから、その時、買いに行こうと思うのだけど・・・無理かなぁ?」「嫌、大丈夫だ!無理じゃないぞ、明日出かける時、渡してやるから出かける前に父さんの所へ来なさい!」「はい、分かりました!父上!明日出かける前に伺いますので、よろしくお願いします!」
そして、実に素直に愛武は父親に一礼をした。
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