「えっ!本当に、嬉しいなぁ~じゃあ、是非買ってくださいよぉ~!」弓枝は本当にこの時、笑顔満面で心から喜びに満ちて嬉しそうだった。でも、このような場面は何も、この時だけでなくて、常日頃から何度も繰り返し起きていた事だった。犬が歩けば棒に当たるように、出会い系や伝言で誰かに出会う度、可也の高確率でプレゼントを買わせていたからだ。二人に一人は確実だったし、%で表現したら、90%はたいがいOKだった。NGになったのは、どうしてもお金が無く、しかもカードも持っていない相手だった場合だけだ。
結局この時は、上下薄いグレーのスーツの男がルイヴィトンのセカンドバッグ、“ポシェット・ガンジュ”カードで買ったのだった。勿論、弓枝は最高に嬉しそうで得意げになっていた。それも、いつもの事だったが。
極め付けに最後は、弓枝が濃い緑で袖がクリーム色のスタジアムジャンパーと下が薄いブルーのジーンズの男に「ねぇ、買い物が無理でも食料品なら買えるでしょ?この人も祝ってくれたんだからあなたも私の誕生日、食料品で祝ってよ!私、お鍋が食べたいのよ!」と肩に擦り寄って強請ったのだった。「それくらいなら、何とかなるよ!」お付き合い上、自分だけ何も買わない訳には行かなくなったのだろう。濃い緑で袖がクリーム色のスタジアムジャンパーの男はそう言うと「じゃあ、この時間でも空いている食料品売り場があるなら案内してくれよ!」と弓枝に尋ねてきた。すると弓枝は即座にこう答えたのだ。「ああ、あるよ!北新宿にスーパーマイルっていうのが、24時間営業で看板はオレンジ色だよ!」「あるよね!うんうん、あそこなら鍋の具材が沢山あるよ!」楓も続けて援護するように口添えをしたのだった。「場所は大久保駅北口から直ぐだから、直ぐ移動しようよ!」
そして、カードでルイヴィトンのセカンドバッグを買った上下薄いグレーのスーツの男は、明日は早くから用があるから帰ると言い出したので、―次から次へと際限なく強請られると思い、い辛くなったのだろう―濃い緑で袖がクリーム色のスタジアムジャンパーの男と楓と弓枝の3人で北新宿のスーパーマイルに向かい、到着するとそこで鍋の材料をタップリと買い込んだのだった。
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