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無論、その後、弓枝の実家のビルへタクシーで―スタジアムジャンパーの男は車に乗ってきていなかった―向かい、3人でお鍋を作って食べようと言う話になったのだが、実際に弓枝の実家のビル前に到着すると、しばらくビルの3階に上がって来て、中をジロジロ見回していたのだが、すぐガスコンロが無い事に気づき「あらら、ガスコンロ無いとお鍋は作れないね、それに鍋を作る時に使う土鍋も無いと作れないよ」と呆れた様子で弓枝と楓の二人に問いかけたのだった。

すると弓枝が男に指示をした。「土鍋は、確か2階の台所にあるよ!あとカセットコンロは器具はあるから、コンロのガスボンベだけ買えばいいだけ、だから悪いけど今から、すぐ近くにあるファミリーマートで買ってきてくれない?」「分かった、行って来るよ!」直ぐに一つ返事でスタジアムジャンパーの男はコンビニに向かったのだった。

このように大概の男が弓枝と知合うと皆、何かに魅入られたようにポォ~っとして言いなりになっていたのだった。それほど愛らしくて魅力的だと言えば、そういう事になるだろうか。何せ、19歳当時は100人以上コンパニオンが在籍するキャバクラでNO.2まで伸し上ったくらいなのだから男心を惹く魅力に溢れていても当然だろう。

結局、それから15分位して男は直ぐに戻ってきた。そして、さあ、これから鍋を作ろうという時に男は急に「あっ、俺、せっかくだけど、今日はこれで帰らせてもらうよ!実はお腹は特に空いて無いんだ、ただ誕生日を祝って上げたかっただけだからさ、悪いね、帰るね」と言い出しソソクサと帰ってしまったのだ。弓枝も特に引き止める様子も無かった。

結局、弓枝と楓の二人きりになったが、楓が鍋を作る事になり、暫し、鍋作りに力を注ぐ事40分、見事お鍋が出来上がった。それは、鶏肉と白菜と春菊とえのき茸と椎茸と春雨で出来たお鍋だった。スープは出来合いの真空パックの液体を入れて水で薄めた物だった。さっそく食事をしたが、一杯か二杯食べ終わると楓も急に帰ると言い出したのだった。弓枝は「そうか、じゃあ、またね!」と別に強く引き止める事もなく楓を見送ったのだった。

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