楓が今、現れた男にそう尋ねると男は直ぐこう答えたのだ。「ええと、誕生日のプレゼントをくれる人って入ってたよ!」やはり、優先して返事を返しただけあって、この男も誕生日のプレゼントの件でやって来たらしい。男の服装はサラリーマンらしく、上下薄いグレーのスーツで白いワイシャツに濃い紫のネクタイだ。

「じゃ、是非、これから私の誕生日祝って欲しいんですけど、もうデパートしまっちゃっているから買い物できないから・・・」弓枝が、そこまで話した時に、男がその言葉を遮るようにこう言った。

「嫌、買い物できる所なら、まだ他にあるよ、そこは２４時間営業だよ、商品もブランドのバッグとか時計とか日用品まで色々、沢山揃っているよ!」「ええ、すごい詳しいじゃん、じゃあ、さっそく行こうよ!」「弓枝ちゃん、じゃあ先に来た人はどうするの?」「だってさ、この人迷っているみたいだから仕方ないよ!気前が良くてカッコいいお兄さんのほうにしようよ!」「ちょっ・・待って、せっかく来たのに・・そんな言い方って酷いな、分かった、俺、金だけ置いて行く、君の誕生日俺も祝いたいから・・・後は、その男の人と行けばいいよ行きたい所へ」

比較されて悔しくなったらしく最初のデニムのブルージーンズの上下姿の男がそう言うと新しく来た上下薄いグレーのスーツの男がこう言い放った。「それじゃ、君が、可愛そうだよ、先に着たのにね、だったらこうしない?君も僕の車に乗って一緒に買い物しに行こうよ!俺ら二人で彼女の誕生日を祝って上げないか?」「ええ、それは構わないけど、本当に一緒に行っていいのかい?」「勿論だよ、僕も友達が増えると嬉しいし、誰か同じ目的の仲間がいると心強いからね!」「ええ、じゃあ、これで一件落着じゃん!」「よかったね、皆で行けるんだね、買い物できる所へ、ところで、そこは何処なの?なんて名前の場所なの?」楓もまるで自分の事のように嬉しそうだった。

「ドン・キホーテの新宿東口本店だよ!車を飛ばせば１時間もしないで行けると思うよ」「それじゃ、皆でレッツ・ゴー!!」弓枝が“レッツ・ゴー!!”と叫んだ後、伝言で呼ばれて来た男二人と弓枝と楓の４人は、薄グレースーツ姿の男の車で一路ドン・キホーテの新宿東口本店に向けて出発進行したのだった。

しかし、ここで気になるのは、弓枝がこのさっきから、この時点に及ぶ間まで、ずっと、この間、楓の誕生パーティーで知合って、その後の今日の昼過ぎに、かなりの豪勢なプレゼントを買ってくれた坊ちゃん刈りの貴公子、愛武の事が少しも頭の中にないのがすごく不思議だし、呆れ返るばかりだと言う事実だ。