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「これにこのメモの台詞を全部吹き込むの?」楓がそう尋ねると弓枝が「そうだよ、一つの電話番号に二つの伝言に自分のスペース作ってそのオープンボックス一つづつにそれぞれの台詞を吹き込んでね」と説明をしたのだった。

楓が言われるとおり、まず一番上に書かれてある電話番号に電話をしてメモの台詞を吹き込む作業に取り掛かりだした。「頑張ってね!私はもう一つの電話で駅前にオタッキーを呼ぶからさ!」

そうだ、弓枝の家には弓枝専用の電話と親も使う元々の電話との二つの回線があったのだ。なので、その気になれば電話線ごともう一つの電話を持ち込んで、いっぺんに二つの電話を同時に使う事も可能だった。

弓枝は、とかく人に指図をするのが好きだし得意であったが、決して怠け者な訳ではなくて、自らも積極的にパキパキと行動をするタイプだった。そんな行動的で人の先頭に立って行動をとる事ができる弓枝の事をいつも楓は自分にはない素晴らしく頼もしい個性を感じて羨望の眼差しで見ていたのだった。

しばらくして楓の伝言のオープンボックスへの吹込みが全て完了すると、弓枝は、さっきか掛け始めたばかりのテレクラの電話の会話に躍起になっていた。

「だからさぁ・・・来れるか来れないかだけだからこっちは、来れないならグチャグチャいうなよ!バァアカ、オタッキー!!」どうやら誘っても断られたらしい、だが、そんな事にもめげず片っ端から自分の知っているテレクラの番号に掛け捲っていたのだった。―弓枝は沢山のテレクラの番号を常時メモに控えて持っていたのだ―

「あ、もしもし、今から、○○町駅前まで来れない?会おうよ・・・うんうん、そう、すぐ来れる?・・うんすぐ行けるよ!」やっと会える相手が決まったらしい。「弓枝ちゃん、誰か会える人みつかったんだね!」「そうそう、伝言ボックスの方はまだでしょ、一時間おきくらいに台詞を吹き込みなおさないとね!」「そうだね!その方がいいね!その方がきっと相手がみつかるよね!」「今、一人会える奴が見つかったから、まず、そいつに先に会おうよ!伝言は、また後で覗こうよ!」「うん、じゃあそうしようよ!」「今から20分後に○○町駅前に来るって行ってたから、間に合わないからもう出よう!」

それからすぐ弓枝と楓の二人は一路○○町駅前まで向かったのだった。

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