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楓がビルの入り口から階段を上がっていくと、2階部分の扉が少し開いているのが分かった。おそらくここが玄関なのだろう。と言うか、前からの友人である弓枝の部屋がこのビルの2階部分であるのは、楓は重々、承知していたのだ。

「弓枝ちゃぁあん!楓です!着いたよ!」しかし、中からの返答は無かったのだった。

「弓枝、楓来たのに、まだ寝てるのか!起きな!」弓枝の母が弓枝に声を掛けているのが聞こえてきた。

そして、そのしばらく後に弓枝がのっそりと2階の玄関扉部分から黄色の柄付きパジャマ姿に寝ぼけ顔のままで欠伸をしながら姿を現した。

「今、眠いから、あと30分したら来てよ!」「うん、分かった!眠いのに起こしちゃってごめんね!下に降りてるね」

上がっておいでと言われてから尋ねて言ったのに酷いと思うが、楓は愚痴一つ言わないで大人しく下に降りて行ったのだった。元々、楓は大人しくて素直な性格だったので、少し強引で我侭な弓枝に言われるまま言いなりになって、振り回されている事が日頃からも多かったのだ。でも、幼馴染の愛武と共に、この弓枝とも、かれこれ4、5年前からの仲良しなので、すっかり情が移ってしまい、多少の我侭だとついつい楓も許してしまうのだった。

階下に降り、約束どおり30分待つと、また楓は弓枝の住むビルの入り口から上に上がっていったのだ。「ねぇ、もう30分経ったよ!入っていいかなぁ?」楓がそう伺うように尋ねると少し経ってから奥の方から「うん、いいよ、こっちに入ってきて!」と言う弓枝の少しまだ眠たそうな声が聞こえて来たのだった。

2階玄関から奥へ入っていくと、いくつか部屋があったが台所の隣が部屋っぽかったので、そちらの方へ向かって進んでいったのだった。するとビルの一階出入り口前の小さな路地に面した側の部屋で弓枝が自分のベッドに横たわっている姿が見えてきた。

「楓ちゃん!こっち来て!・・今日の打ち合わせしようよ!」「うん、勿論、その為に着たんだけどさ、ところで、どうやって稼ぐの?」「その話だけど、まず、片っ端から伝言のオープンボックスに今からメモに書いて渡す台詞を吹き込んで欲しいのよ!」

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