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そして、愛武は、この次、弓枝と会うのは大分先になりそうだなぁと思ったのだった。何故なら、今日、たったの一日で既に21万4,000円ほどの大出費をしているのだ。なので、とてもじゃないが明日、明後日に、また会おうと言う気は起きないのだった。しかも、一般サラリーマンに対して、サラ金にアタックを掛けろとは、いくらなんでも、あまりにも酷い話だった。

初めてのデートで、大きな買い物尽くめだったし、だからと言って一言も弓枝のほうから“使わせてばかりで悪いから私も少し出すね”と言う言葉は聞けなかったのだ。つまり、弓枝という女は、そういう当たり前の思いやりが無い女性と判断されたのだった。

だが、そんな当たり前のような非常識と思われる立ち振る舞いに対しても、今の愛武は、スッカリ弓枝の少し派手なセンスではあるが整った優美な美貌やチャーミングで洗練された仕草に魅了されてしまって何も言い返せない状態になってしまっていたのだった。恋という毒にスッカリ満たされてしまったかのように愛武は呆けた状態に成り下がっていたのだった。

ただ、愛武は先に一般サラリーマンだと話したが、実は、ただのサラリーマンではなくて、愛武の父親は実業家で愛武はちょっとしたミニチュア版の御曹司であった。従って一般家庭のサラリーマン男性よりは遥かに裕福であり、土日の休みのどちらかは、タレント養成学校に通っているほどなのだ。そのような学校に興味を持つほど、生まれつき容姿端麗なのは、然る事乍ら 、常に知己に富み、洒落たユーモアセンスも周りの仲間から好かれ慕われる要因となっており、見逃せない愛武の特徴となっていた。

周りからみたら、このような恵まれた環境で生まれ育った愛武とこれまた実家が自営業でお嬢様育ちの弓枝は正に絵に描いたようにお似合いのカップルに見えているのは間違いなかろう。

温泉とか旅行に行く資金のの調達を巡ってサラ金に走るなんてみっともない事、いくら弓枝を好きでも、本当にそこまで出来るのか愛武は真剣に悩んでしまっていた。

弓枝がしばらく悩むような様子の愛武に対して

「だったら今度は無理しないで割り勘でもいいよ!」と言った時には愛武は一瞬、“えっ!”と思ったが、やはり、内心は嬉しかったのだ。「だったら来週でも会う事は可能だよ!」と元気よく答えたのだった。

「でも、心の準備はしておいてね!」「それって、サラ金の事かい!」「うん、そうだよ!でも、サラ金以外でも現金を用意できたらいいんだから、その方法も今度会った時二人でじっくり話し合おうよ!今度は、本当に割り勘でいいからさ!」

弓枝も珍しく相手に対して割り勘で良いと言うのだから、愛武の事を満更でもない様子だった。

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