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時間通り飛行機が到着して無事に搭乗すると、愛武と弓枝の二人は、一気にアメリカフロリダディズニー旅行の6日間の疲れが一気に噴出してしまって、グッタリとして死んだように眠りに入ってしまった。だから、そのまま成田空港まで二人は一言も口を利かず、ただグーグーと鼾を掻いて寝ていたのだった。成田空港に着き、東京経由の成田エキスプレスに乗ると東京まで電車の中で、またグーグーと寝てしまったのだ。なので、少し駅を乗り過ごして通過してしまったので、また乗りなおして東京に戻る二度手間になった。

そして、予定通り東京から山手線に乗り換え上野に行きダイヤモンド街に向かった。ダイヤモンド街に入っていくと、最初に目に付いた一軒のジュェリー店に40万ほどのダイヤのピアスが置いてあり、それを見て非常に弓枝が気に入ったようだったので、愛武は、現金で40万を即金で店に渡してそれを購入した。「有難う!愛武、本当に嬉しい!」「いいんだよ!シャネルのスーツのシミの弁償だから気にしないでいいよ!」

スーツケースは成田空港から宅配便を手配しておいたので身軽だったので手荷物は必要最低の必需品が入っているセカンドバッグやショルダーバッグだけで、したがってさっき買ったダイヤのピアスは小さな紙袋一つなので持ち歩くのは楽だ。紙袋を持って歩く途中、どうしても弓枝が今すぐ耳に飾りたいというので、その場で紙袋からダイヤピアスの入った小さな箱を取り出し開けて中からピアスを取り出し耳に飾るのを愛武が手伝った。

「綺麗だよ!とても・・・!」弓枝の耳に今、飾られたばかりの輝くばかりのダイヤのピアスが太陽の光線が照り返して光の反射を周囲に放っていた。その光の一筋が愛武の瞳の中にも突如、飛び込んできた。その途端眩しくて愛武は目がクラクラとしてきた。思わず手で目を覆った。「大丈夫、愛武、目に何か入ったの?」「ううん、ちょっとダイヤのピアスの光が急に目に飛び込んできたから眩しかっただけ、大丈夫だよ!」「そう、それならいいけど・・」

今、目の前でとてもすました様子でダイヤピアスを耳に飾り、上野のダイヤモンド街を闊歩しているブランドスーツを身に纏った美女が自分のフィアンセなのだ。これは、真面目にみんなに自慢できることだろう。自分は、親がちょっとした実業家で所謂ミニチュア版の御曹司だから、多少お金が掛かっても、何とか立派にリードして弓枝のことをきっと幸せにしてみせる。そう、愛武は硬く硬く心に誓っていたのだった。

アメリカフロリダディズニーの旅行の最後の日に―つまり昨日だ―二人が出会ってから初めての大喧嘩をしてしまったが、愛武は、自分も他の男と話したくらいでいきなり怒鳴ったのが悪かったと深く反省しているのだった。そして、これから先は、そのようなことがあってもすぐに怒ったりしないで広い心で穏便に対応して行こうと思っていた。それが、きっとこの先も二人が上手くやっていくための大事な秘訣だと思われた。

上野のダイヤモンド街でダイヤのピアスを買った後、愛武と弓枝の二人は連れ立って目黒の不動産に向かった。その理由は簡単だ、弓枝がフロリダ旅行の最後の日に言っていた“ジックリと落ち着いて寛げる場所”を探しに行くためだった。手持ちのおこづかいは残り100万円くらいに減っていたが、内金だけでも入れておいて足りない分は後からにしようと決めていた。

目黒の不動産屋の受付の社員は、とても対応が迅速で丁寧で対応は文句のつけようがなかった。だが、問題は手付金を払う段階において、出来れば、全額を入れてくれた方が確実だということと、手付金を入れるとキャンセルしても返金できないということだった。結局、ある一つの物件を弓枝が気に入り、それに決めた。―もちろんマンションだ―

そのマンションは二つの部屋があり、ダイニングルームもついていて暖房も完備していた。その上、オール家電で住み心地は満点だ。

「愛武!本当にどうも有難う!50万円も内金を入れたからお金もうないでしょ・・・今日はもうここでここでバイバイしてもいいよ!」愛武がマンションの内金を50万円ピッタリ不動産屋の社員に渡して不動産事務所から外に飛び出すとすぐ後から付いて出て来た弓枝にそう言われた。

「それは自由にしていいよ!まだお金はあるけど、確かにかなり今回の旅行で使ったから大変になっているのは確かだよ!」「じゃあ、シャネルのスーツだけクリーニング屋に出しておいて、私ここから一人で帰るから・・」そういうと弓枝はシャネルのスーツが入っていると思われる紙袋を愛武に手渡すとスタスタとその場を立ち去った。その姿を見届けると愛武も一人家路を辿った。

部屋に帰ると愛武は疲れて倒れる前に、まず部屋中にあるひまわりの花に水をやった。それから、壁の隅の方に纏めて飾り付けてあるひまわりの造花の配置も少し変えてみた。そうすると部屋の感じが中々纏まって見えて感じがよくなった。旅行から帰ってきたばかりで疲れ果てているはずなのに、頑張って部屋の中を整えた。根っから几帳面な愛武の性格がその行動に滲み出ていた。

そして、旅行が終わってもまだ落ち着いてはいられなかった。何と言っても来週はとうとうタレント養成学校のオーディションを受けるから、晴れてスターになれるかどうかの瀬戸際だからだ。スターになれば、まるでひまわりの花のように美しくて優雅な弓枝を堂々とスターの花嫁として迎えることが出来るのだ。

だから、何としてでも頑張ってオーディションを受かるようにしないとならないと愛武は熱く希望に燃えていた。そして、受かるために明日、いや、今日今からでも個人的に稽古をしないといけないと考えていた。愛武は部屋の整理が終わってもすぐ寝巻きには着替えず、なんとレオタードを着用しすっかり稽古着モードに切り替わっていた。

「僕は絶対に来週のオーディションに受かってスターになってみせる!」愛武は部屋の中でハッキリと声に出してそう誓った。

それから愛武は部屋の中でずっとオーディションの稽古に励んだのだ。何と旅行から帰ってきてから稽古まで休憩もしなければ一睡もしていない。飛行機の中で睡眠をとったからその分元気のせいもあるが後でばてる可能性も高かった。だが、愛武はそんなこともおかまいなしでギリギリ体力が続く限りオーディションの稽古を自分の部屋で頑張りとおしたのだ。

愛武の部屋は結構広く8畳あった。そして部屋の中に小さいトランポリンを置いてその上で愛武はレオタード姿で無邪気にジャンプしたり踊って稽古に励んだのだった。“ああ、目が回る、だけど頑張って受からないとスターになれないから耐えないと!”愛武は頭がくらくらして眩暈をしきりに感じ、額には冷や汗が垂れてきて、体もだんだん火照ってきたけど、それでも頑張って稽古に励んだ。

そして、心からこう思った。“マンションの頭金をおこづかいの最後の残りで支払ってきたから、これで何事もなければ当分弓枝に別れようと言われる心配はないな・・・!”そう考えた時、ホッと安堵の色が愛武の顔色に浮かんでいた。やはり、まだ弓枝とお別れするのは非常に心残りが多かったのだ。

さらに言えば、愛武は、アメリカフロリダディズニーの旅行から帰ってきた今でも、まだ弓枝のことがよく分からなかった。未だ弓枝は愛武にとって掴みどころがない謎の多い女性だとしか言いようがなかった。

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「うんうん、ぜひ、そこでまた会おうよ!」「OK!」

弓枝は、さっきこのアメリカフロリダのディズニーランド周辺のディスコで知り合ったばかりの二人組の男のうちの一人といつの間にか帰国後の再会の約束までしていた。

「ちょっと!なんだ君は!この女性は僕のフィアンセなんだ!馴れ馴れしくしないでくれ!」とうとう、耐え切れなくなったらしく、愛武がオレンジジュースを二つ両手に持ったままで、大声で怒鳴った。見るとそのオレンジジュースを持つ手はワナワナと震えていた。

「ええ、そうなの!?フィアンセがご一緒だとは気づかなかった物で・・・あぁ、どうもすみません!」とても素直にこのニヤケタ二人組の男のうちの一人は、すぐにそう謝ってきた。きっと、面倒が嫌いなのだろう。

「愛武ぅ~!怒るなんて酷いよ!ただ、楽しくおしゃべりしていただけなのに・・・あんまりだよ!」「でも、君は僕ともう婚約したんだよ!勝手な真似は困るよ!」「ええっ!それ、まじぃ~!愛武ってそんなにうるさい人だったんだぁ~!何か今まで私が思ってた愛武と全然違っていてショックだよ~!」

「俺達、場所移動しますから・・それじゃ!」二人組の男はそそくさと決まり悪そうにその場を立ち去って行った。

「ああああぁあ~~~!帰っちゃったじゃぁん!せっかく仲良くなったのに、酷いよ~!あんまりだよ!愛武がこんなにうるさい人だったなんて・・・・!」「僕も好きでうるさくしている訳じゃないよ!君がこんなにも軽い女性だとは知らなかったよ、僕の方こそショックだよ!」愛武は今起きた突然の出来事に驚きと絶望を隠せない様子で狼狽した。

気づけば手に持っていたオレンジジュースを興奮のあまり、とても強く力を入れて握り締めてしまったので紙コップはクシャクシャになり中身のジュースは全て零れ落ちてしまっていた。

「ああ、もう!ジュース飲みたかったのに!早く新しいのと取り替えてきて!」「自分で行ったらどうだい!」「何よ!その言い方!..あああっ!私のシャネルのスーツにジュースが掛かっちゃったよぉ~!どうしてくれるの!?」「どうしてって!?それは僕が買った物だよ!それに、汚れたならクリーニング出せばいいよ!」「だって、もう今日の夕方には飛行機に乗って帰国するんだよ!クリーニング出している暇なんてないよ!」「日本に着いてから、すぐにクリーニング屋に行こうよ!」「それじゃ、時間が大分経っているから絶対にシミが残るよ!弁償として指輪を買ってちょうだい!ううん、ネックレスでもいいよ、ダイヤ入りでプラチナのやつにしてね!」

これは、二人が出会ってから正真正銘の初めての喧嘩だった。こんなにも激しく罵り合ったのは本当に初めてだった。

「もういいよ!」突然、弓枝はそう言うとその途端、その場から走り去った。勿論、その後を愛武は追いかけたが、意外に早足なのですぐ、姿を見失ってしまった。一体、何処へ行ったのだろう!?そう思ったが分かる訳も無かった。とりあえず、ホテルの部屋に戻ればきっと戻ってくると思ったので愛武はディスコを後にして一人ホテルの部屋に戻ったのだ。案の定、数十分ほどすると、弓枝はホテルに戻って来た。一時間も待たないで済んだのだ。だが、何だか様子が変だ。機嫌が悪いのはさっきあんなことがあったんだから当然だろうけど、その他にもまるで何かあったかのように顔色がすごく蒼ざめていて眼つきも鋭かった。

「愛武!日本に戻ったらすぐにクリーニング出してよ!それから、上野のダイヤモンド街に行くからね!」「いいけど、何しに行くの?」「シャネルのスーツのシミの弁償としてプラチナ台のダイヤの指輪買ってもらうってさっき言ったはずだよ!人の話ちゃんと聞いている?」「ああ、ごめん、ごめん、今思い出したよ!うん、分かった必ずそうするよ!」「必ずね!」

それから、二人は、ホテル内のお土産コーナーに向かい、弓枝に指図されるまま、愛武が、しこたまあれやこれや買う羽目になったのだった。その中には、今すぐ必要だとはとても思えないような物もあった。その一つはタコのお人形がついた浮き輪だった。他にも、団扇だとか、扇子だとかあまり必要性がないと思えるものが多かった。でも、弓枝が、どうしても欲しいというので言われるままに愛武はそれらの土産品を買ったのだった。

帰国の時間が近づき、空港に着くと、また、弓枝が行きたいと言うので、空港内のお土産品コーナーにすぐ向かった。そこで買った物は、まずフロリダとはあまり関係ないと思われたが、これまたどうしても飛行機の中で食べたいと言うことで、ハワイのマカデミアナッツ入りチョコレートを買ったのだった。

それから飛行機の搭乗時間までまだ時間があったので喫茶店に入りお茶をした。「ねぇ、愛武!人の話ちゃんと聞いてる!?さっきからずっと上の空じゃない?」「そんなことないよ!ちゃんと聞いているよ!」「じゃあ、今さっき話したこと言ってみて!」「えっ!突然言われても・・」「ほらっ!やっぱり聞いてないじゃない!?・・・だから、日本に着いたら、もう私が他の人と話しても邪魔しないでって言ったの!それから、他の人の前で婚約していること絶対に内緒にして欲しいの!だって、そんなこと誰にでもベラベラ話すことじゃないでしょ!」「うん、分かったよ!でも、一言イっていい?婚約していることって内緒にしないといけないことかな?それは僕は違うと思うなぁ~!」「私は嫌なのね!だってプライバシーで個人情報だよ!それから、愛武、私、今回の旅行のディスコでの件ですっかり気分害しちゃったから、婚約の話無かったことにして欲しいの・・・性格が合わないと思うのよ!」「そっ、そんなぁ~><!!謝っても無理かな?」「うん、無理、でも、どうしても仲直りしたかったら、もう一度婚約を考えて欲しかったら、日本に帰ったら、二人で会う場所としてマンションを借りるから頭金をすぐ用意して欲しいの・・100万あればおつりくるから大丈夫でしょ!」「そんなに掛かるの?」「うん、最低それくらいはどうしても掛かる、それにそのお願いを聞いてくれなったら多分、もう会うことは出来ないと思う」その時、弓枝の目が鋭く冷たくギラギラと光っていた。「良いけどさ、それくらいならなんとかなると思うけど、別にマンションを借りなくてもデートは出来ると思うけどなぁ」「私は、落ち着いてジックリと寛げる場所が欲しいの・・・その協力をしてくれないのなら、あなたとはもう会えない・・」「分かった、考えてみるよ!」「考えてみるじゃなくて、必ずそうしてよ!」

そうこうしているうちにあっという間に搭乗時間が残り僅かとなったので、愛武と弓枝の二人は空港内の喫茶店を背にして飛行機の搭乗口に向かった。

とても悪戯で茶目っ気のある眼つきで弓枝が愛無に甘えるような上目遣いで語りかけた。「ねぇ、愛武!私、グッチのバッグ買ったら、あと、お財布も欲しいんだぁ~!でも、それはグッチじゃなくてクリスチャンディオールとディルイヴィトンのエピシリーズのお財布がいいの・・大丈夫かなぁ!?愛武、お金足りる?」「うん、だいじょうぶだよ!また足りない分も付け足して、全部で300万持ってきたからね!」その時、弓枝の愛しいプリンスの愛武の美しい切れ長の流し目の中にお星様が無数にキラキラと眩いほどの光を放ちながら瞬いていた。

愛武は心から弓枝に深い愛情を感じ、どんな事でも積極的に協力して、いつでも最高の喜びを与えようと必死になっていたのだ。

「絶対だよ!やっぱりやめたって言わないって約束してね!」「うん、約束するよ!」「どんなことがあっても約束を果たしてね!」「うん、分かったよ、そうするよ!」

今日の弓枝が着ている、銀のラメ入りのヴェルサーチのスーツもとても決まっていたが、それと共に、過去にメイクが得意だというだけあっただけあって、フェイスの方も、まるでモデルのようにバッチリ決まっていた。なので、いくらちょっとした御曹司の愛武であっても、まだ若くて、その上元来面くいな為にこの美しい蝶のような弓枝の要求を撥ね付けることは決してできないのだった。

愛武はおしゃれな二コルの濃い水色のスーツを身に纏い、とてもなれた感じに手を差し伸べると―既にフィアンセである弓枝とは日本国内で何度もデートしていて腕を組むのは慣れていた―腕を組み弓枝を雄々しくリードした。

まず予定通り、手始めにグッチのバッグを買った。それから、クリスチャンディオールのショップに行き、そこでお財布を買ったのだ。グッチのバッグは、全体が黒でポケットが二つついていてベルトバッグになっており、7万円もするものだった。そして、クリスチャンディオールのお財布は、長財布(二つ折り)の紅色のエスニック レディスという名前の物だ。値段は、74,000円とこれまたものすごい高価な物だった。

愛武は、弓枝との約束どおり、それらを全て一気に買い物したのだった。そして、たったの一日でブランドのスーツやバッグやお財布に実に30万円も使ったのだった。これで、アメリカフロリダディズニー旅行のために用意してきた愛武のおこづかいは300万円から270万に一気に減ってしまった。

でも、まだまだ、おこづかいはタップリあるから、これから残りの5日間思う存分楽しむぞ!と愛武は心からそう強く誓った。

愛武はこの時、まだ弓枝に夢中で、その弓枝の洗練されたコンパクトボディの妖艶な美貌に逆上せ上がっていたために気づけずに、すっかり見過ごしていることがたくさんあった。それは、まず一つは、弓枝が愛武だけでなく他の異性とも普段から平気で頻繁に交流をしているという点と、その他には、買い物が何よりも大好きで、しかも、非常に高価な商品を好み―いや、ハッキリ言って高価な物以外は見向きもしないと言った方が正しい―しかも一流ブランド品だと特にご機嫌になるという強い習性のことだ。買い物が好きで一流ブランド品が好きだというのは愛武もとうに初めてのデートの時から気づいていた。

だが、自分以外の男とも頻繁に会っている、しかも、不特定多数の男と―さらに、付け加えれば、まるでそれらの男共をまるでメシアか何かのように扱っていることには未だに露とも気づいていなかったのだ。“弓枝は、僕だけの物だ!僕だけと付き合っていると思う”愛武は、心からそう信じきっていたのだった。それだから、弓枝と結婚を誓い婚約をしたのだし、これほどまでに我がままを言われても、その願いを全て叶えてやっているのだった。

今後、いや、この夢のように楽しい!?はずの(買い物)旅行の最中にもし、弓枝のその本性がばれてしまったら一体どういうことになるのか、想像だに恐ろしい限りだ。愛武のことだから、きっとその事実を知ったなら、ショックのあまり、一目を憚らず突飛な行動に走るに違いないのだ。

弓枝は旅行の最中、5日目まで特に変わった様子もなく、どこへ行っても陽気にハシャギ甘え上手だった。そして、買い物のショップを見つけると必ず買うわけではなかったが、物欲しそうな目でジロジロとウィンドウ越しにいつまでも商品を目で追いかけ、暫くその場から動かなくなるのが常だった。まるで買って下さいよと言わんばかりのポーズだった。

しかし、愛武が弓枝に最初の日の買い物以外にも、シャネルの8万円以上もするサンダルやフェラガモのローヒールなど高価な物を連日連夜買わされていたのは事実だった。だが、やはり、お金を持ってきていない訳じゃなかったので強くおねだりされると断りきれなかったのだ。

性交渉は若い二人にしては珍しくこの5日間、まったく無かった。とても、そういう雰囲気にならなかった。決して弓枝に魅力が無いとかそいう訳ではなかったのだが、婚前前なのでそのような破廉恥なことは出来ないという良識もあったのだった。

ただ、ベッドに入る時間になると弓枝が愛武にマッサージをしてくれと頼むで、仕方なく愛武は弓枝の肩や首筋や足腰など全身の凝っている部分を手の指でマッサージしてやったのだった。弓枝の体は結構固太りで、マッサージする指や手にも結構力が必要で、暫くマッサージをしていると手が痺れて来て次第に腕にまで痺れが及び最終的に疲れ果ててしまうのが常だった。愛武が自分のベッドに戻る時は、自分で自分の手や掌や腕を痺れが取れるまで暫くマッサージしないとならない状態だった。自分の手や掌や腕のマッサージが終わると疲れ果ててしまっていて、寝る時には額から冷や汗が垂れていた。そして、その頃には弓枝は一人グーグーと鼾を掻いてとっくに先に眠りに入っているのだった。鼾を掻いているのがもしブスだったら、とても耐え切れない光景だが、弓枝は大変美しいので、愛武にはそれすらも愛おしく感じられた。

そして、最後の6日目だったが、弓枝曰く、“最後の日だから楽しまなくっちゃ!”と言う事で、ディズニーランドで楽しかった、「ロックン・ローラー・コースター」にまた乗り、その後、ディズニーキャラクター達と一緒に記念撮影をしてから、また例の如く、買い物としゃれ込もうと言うことになった。

だが、何故か予定は急遽変更になり、ディズニーランドで「ロックン・ローラー・コースター」に乗った後、ディズニーキャラクター達と記念撮影が終わると、近郊のディスコに行こうということになった。

何故、急に?愛武はそう思ったが弓枝がそう言うのだからと思い素直に従った。大好きな買い物でなくてディスコに変わったのが少し意外だったのだ。

タクシーに乗って近郊のディスコに入ると、そこには沢山の見知らぬ外人や観光客がいて、もちろんその中には日本人らしい姿もたくさんあった。「ねぇ、奥に行こう!」弓枝に手を引かれるままに愛武はディスコの奥へと向かった。もちろん中は暗がりでやたらミラーボールがギラギラと眩い様々なカラーの光を周囲に放っていた。音楽もガンガンにかかっていて、ユーロビートや日本のジュリアナやマハラジャっぽい音楽にも似ていて大変乗りがよくて耳に心地良い。

弓枝の後を追って行くと、ダンダンと視界が開けてきた。それもそのはずだ。ディスコの隅のコーナーの方は明るい照明が付いていてその場所なら周りの様子がハッキリと見て取れたからだ。目の前に二人組みの男がいたが、あまり気にならなかった。弓枝が喉が渇いたというので愛武はすぐに機転を利かせてディスコの中のフリードリンクコーナーにオレンジジュースか何か美味しそうなソフトカクテルを頼みに行った。愛武が予定通りオレンジジュースを二人分持って弓枝の下に戻ると弓枝はさっき見た二人組みの片方の男と意気投合してしきりにはしゃいでいた。

「ねぇ!同じ日本なんでしょ!じゃあ、あそこ知っている?◎▲×・・そうそう、私もよく行くのよ~!」「じゃ、日本に戻ったらそこで、また偶然会えるかもね!」

そして、二人は仲良く肩を並べてその場を立ち去ったのだ。

それから何日か経って、いよいよ楽しみにしていたアメリカフロリダディズニー旅行の日になった。つまり、26日だ。

その日、弓枝は思いっきりおめかしして、愛武との待ち合わせ場所に向かった。

しかし、いつもの習慣で時間にルーズな弓枝は、待ち合わせ時間よりめいっぱい遅れてしまい待ち合わせ場所に着いた時には既に愛しいフィアンセの愛武が先に来て待っていた。現在の時刻は、まだ朝の8時だった。待ち合わせの本当の時刻は7時だった。二人が待ち合わせたのは弓枝の最寄の駅の錦糸町の駅前だった。

珍しく、実家ビルの前まで迎えに来てと弓枝が言わなかったのは、実は夕べは楓と一緒に行動を共にしていて―また例の如く伝言ダイヤルの男相手にいつもの活動だった―帰りは、楓と一緒に伝言ダイヤルで知り合い意気投合した男の家に泊まってしまい駅前の方が待ち合わせに都合が良かったのだった。駅前から少し離れた場所まで、さっきまで泊まっていた部屋の持ち主の車に乗って送ってもらったのだった。やはり、当たり前の話だが、男と一緒にいる現場をフィアンセである愛武には見られたくなかったのだ。

弓枝は愛武と目が合うと、すぐに微笑みかけ、そして颯爽と愛武の車に乗り込んだのだった。二人は一路、成田空港へ向かった。そして、それから2時間半くらいで弓枝と愛武は成田空港に着いたのだ。

成田空港に着くと、まだフライトまで時間があるので、トラベラーズチェックを作るとすぐに成田空港ビル内にある喫茶店に入った。

星のプリンス愛武は、アメリカンを頼み、弓枝はホットレモンティーを頼んだ。それから、暫し楽しく談笑した。「ねぇ、愛武、前にマルイで買ってくれたウェスタンブーツ履いて来たよ!」「そう、みせてみて・・・・あっ、いいね、すごく似合っているよ!」「有難う!愛武なら、きっとそう言ってくれると思ったの!」「向こうに着いたら、また何か買うんだろう!?欲しい洋服とかあったら言ってね!そのつもりで多めにお金を用意してきたからね!」「ううんとねぇ~、弓枝ちゃん、シャネルのスーツとグッチのバッグが欲しいの」「何とかなると思うよ!楽しみにね!」愛武の上品で切れ長の綺麗な流し目がキラキラと輝いた。

お昼は機内食が出るから、とらないで飛行機に時刻どおり乗り込んだ。飛行機の席に着くと、直ちにシートベルトを着用した。すると、朝、早かったせいか、突然に眠くなり、ついうとうととしたため、愛武は、弓枝に“眠気がすごいから寝る”と告げ、そのまま眠りに入ってしまった。

弓枝は、少し退屈そうだったが、その少し後に愛武の後を追うように眠りに入っていった。そして念願のフロリダに着いた。愛武と弓枝は思う存分はしゃいで、このフロリダの見所である大人も子供も楽しめる夢の楽園ディズニーワールドを楽しんだ。特に感動したのが、ミッキーとドナルドたちや仲間達が踊り捲くるステージショーだ。その他にも、いたずら好きのスティッチを捕まえる「マジックキングダムパーク」もすごく楽しい場所だ。弓枝は始終、大はしゃぎして騒いでいた。とても楽しげだった。また、映画でも有名なモンスターズ・インクの「モンスターズ・インクラフロアー」もとても楽しいコメディーショーだった。そして、「ロックン・ローラー・コースター」にも乗った。スタートからわずか3秒で時速 100km近くまで達する驚きのスピード、宙返り、急カーブの連続を、ロックのリズムを聞きながらノリノリで体感できるものだ。愛武と弓枝は最高に気分がハイになった。

「なんだか夢見たい・・・愛武といると楽しくて時間があっという間に経つ感じ・・・あっ、そうだ・・愛武あのね、今から、フロリダのショッピングセンター行こうよ!まだ時間あるから・・」「うん、いいけど、シャネルのお店のことかな?」「そうシャネルのお店、あとグッチもね!バッグが欲しいから!」「わかったよ!」「私に似合うの買ってね!」「うんうん、じゃ、行くか~!」親愛なる星のプリンス愛武が、愛しいフィアンセの弓枝の前を歩き、先頭を切って、フロリダのブランドショッピング街に姿を現したのはそれからまもなくだった。二人はディズニーワールドからタクシーを利用したのだった。

まず二人が向かったのは、ブランドショッピング街の並びにあるシャネルの看板のお店だった。ショーウィンドウには大きなシャネルのマークが入った素敵なブランドスーツを着たマネキン人形が飾られている。お店の中に二人が入ると、弓枝はすぐにツカツカとスーツのコーナーに向かって歩いた。

そして、念入りにハンガーに掛けられているたくさんのスーツの中から、ある一点を選んで愛武の方に振り返った。「ねぇ!愛武!弓枝ちゃん!これがいいなぁ~!」それは、シャネルスーツ ネイビー で税込みで15万8千円のものだ。

「どれどれ、よく見せてね!」「他のもいいのあるけど、これが一番気に入ったの!」

そのスーツはよく真近で見ると細かい小さな原色がいっぱい混じっていた。それは、紫やピンクやオレンジや白などだ。濃紺なので遠くから見ると全体的には黒っぽい感じだ。だが、さすがシャネルなだけあって大変エレガンスな商品だ。

愛武はシャネルのスーツがこんなにも高いものだということを、この時生まれて初めて知った。“一か月分の給料の半分以上飛ぶなぁ~!いや、殆ど一か月分だ!”内心そう思ったが、もう後戻りは出来なかった。

「よし、買うよ!トラベラーズチェック貸してね!」トラベラーズチェックは弓枝に預けてあった。「はい、お願いね!」すぐに弓枝が愛武にバッグからトラベラーズチェックを出して手渡した。透かさず愛武が受け取り、シャネルショップのレジに向かった。この辺の行動は大変呼吸が合っていた。

レジでトラベラーズチェックで清算を済ますと、その後、すぐにグッチショップへと向かった。もちろん弓枝がグッチのバッグを欲しがったからだ。

多分、この分だとこれだけじゃ買い物は済みそうにないなと、この時、愛武は既に気づいていた。

それから、直ぐ愛武は弓枝から耳当て付きの花柄のニット帽子とウェスタンブーツのある場所を聞いて携帯にメモすると直ぐにその売り場に足早に向かった。正に行動力の男であり同時に少女漫画の王子様のようにキリリとしてハンサムで甘いマスクのメルヘンの使途である愛武の男らしく凛々しい決断の一幕だ。

まず最初に1Fの婦人靴店コーナーに向かった。

「あ、あの先ほど、ウェスタンブーツの取り置きをした女性がいたと思うんですが、僕が代理で引取りに来ました! 」愛武は、婦人靴店の店員と出会い頭、第一声を放った。

「あ、先ほどの方の代理の方ですね!あっ、ですがお客様本人でないと、もし間違いだった場合困りますので・・」そこまで店員が言い掛けた時だ、愛武が直ぐ途中から会話に入って行った。

「では、携帯電話に本人を出しますんで直接話して判断して下さいよ!」「はぁ~!、確実に本人様だと分かれば、それでも構いませんが・・」

店員が返答している時には既に愛武は弓枝の携帯に自分の携帯で電話を掛けていた。そして、直ぐに7階の婦人バッグ売り場にいる弓枝の携帯の着信メロディーが鳴ったのだ。弓枝が携帯を耳に当てると愛武の声が直ぐ飛び込んできた。

「弓枝ちゃん!今、1Fの婦人靴店の店員さんに代わるからさ、本人確認がしたいんだって!」「分かった!直ぐ代わって!」

直ぐに電話の相手の声が1Fの婦人靴店の店員に代わった。弓枝がウェスタンブーツを買った時応対した女性店員だった。

「あっ、もしもし先ほどの者ですが、そうそう、ウェスタンブーツを買った物です!その男の人、私のフィアンセなんですけど、彼から代金を受け取って商品を渡して上げて下さい!」

どうやら、話は直ぐに付いたようだった。

話し終わってから15分か20分位してから愛武がまるで爽やかな春風のように軽やかな足取りで弓枝の前に舞い戻ってきた。その手には、少し大きめのウェスタンブーツが入っていると思われる紙袋と白とピンクの花柄デザインの耳当てニット帽子が入っていると思われる小さい紙袋をシッカリと抱えていた。耳当てニット帽子の方は弓枝に本人確認の為に電話連絡を取らなくてよかったようだ。

「あ、愛武、有難う!待ってたぁあ~~!」

そう愛するフィアンセに呼びかけている弓枝は、パイプ椅子に腰掛けながら18番の癖である右手の指先に明るい茶髪のセミロングのシャギーカットの髪の毛の右サイドの一部分の毛先をクルクルと巻きつけて弄んでいた。

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