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「うん、分かった、そうするね!それから一つ聞いていい?」「なに?」「弓枝ちゃんは、楓が来るまでずっと寝てたの?」「うん、今日はちょっと昼過ぎに出かけたから疲れちゃってね!でもそんなには寝て無いよ!すぐ楓ちゃんを呼んだからね!」「じゃ、外から帰って来てから、すぐパジャマに着替えたんだね!」「そうそう」「何かすごく嬉しそうだけど何か良い事あったの?」「うぅん、そうでもないけど、あっ、そうだそうだ!実はね今日この間、楓の誕生会で会った男の子と会ってたのよ!」「ええ、そうだったんだぁ!そう言えば誕生会の時、今度会う約束していたよね!よかったねうまく行っているみたいだね!」「有難う!それがね思ったよりうまく進行してさ・・・名前なんだっけ?えっとぉ・・」

何と事もあろうに、あれだけ散々買い物をさせて置きながら、もう弓枝は愛武の名前を忘れてしまっていたのだ。

「愛武だよ!」「そうそう、その愛武にたくさんプレゼントしてもらっちゃってさ!」「へぇ、良かったね!」「買ってもらった物みる?」「うん、見たい!」「あっ、でもその前に、ハナコとケイコとマナブとオレンジジュース買ってきた?」「うん、買って来たよ!」「こっちに貸して!」「うん」

楓は弓枝に言われるままに頼まれて買ってきた物を差し出したのだった。「あらら、バヤリースじゃなくて、なっちゃんのオレンジジュースが良かったんだけど、まあ、いいか」楓が買ってきたオレンジジュースは、バヤリースの1.5Lのペットボトルだった。

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楓がビルの入り口から階段を上がっていくと、2階部分の扉が少し開いているのが分かった。おそらくここが玄関なのだろう。と言うか、前からの友人である弓枝の部屋がこのビルの2階部分であるのは、楓は重々、承知していたのだ。

「弓枝ちゃぁあん!楓です!着いたよ!」しかし、中からの返答は無かったのだった。

「弓枝、楓来たのに、まだ寝てるのか!起きな!」弓枝の母が弓枝に声を掛けているのが聞こえてきた。

そして、そのしばらく後に弓枝がのっそりと2階の玄関扉部分から黄色の柄付きパジャマ姿に寝ぼけ顔のままで欠伸をしながら姿を現した。

「今、眠いから、あと30分したら来てよ!」「うん、分かった!眠いのに起こしちゃってごめんね!下に降りてるね」

上がっておいでと言われてから尋ねて言ったのに酷いと思うが、楓は愚痴一つ言わないで大人しく下に降りて行ったのだった。元々、楓は大人しくて素直な性格だったので、少し強引で我侭な弓枝に言われるまま言いなりになって、振り回されている事が日頃からも多かったのだ。でも、幼馴染の愛武と共に、この弓枝とも、かれこれ4、5年前からの仲良しなので、すっかり情が移ってしまい、多少の我侭だとついつい楓も許してしまうのだった。

階下に降り、約束どおり30分待つと、また楓は弓枝の住むビルの入り口から上に上がっていったのだ。「ねぇ、もう30分経ったよ!入っていいかなぁ?」楓がそう伺うように尋ねると少し経ってから奥の方から「うん、いいよ、こっちに入ってきて!」と言う弓枝の少しまだ眠たそうな声が聞こえて来たのだった。

2階玄関から奥へ入っていくと、いくつか部屋があったが台所の隣が部屋っぽかったので、そちらの方へ向かって進んでいったのだった。するとビルの一階出入り口前の小さな路地に面した側の部屋で弓枝が自分のベッドに横たわっている姿が見えてきた。

「楓ちゃん!こっち来て!・・今日の打ち合わせしようよ!」「うん、勿論、その為に着たんだけどさ、ところで、どうやって稼ぐの?」「その話だけど、まず、片っ端から伝言のオープンボックスに今からメモに書いて渡す台詞を吹き込んで欲しいのよ!」

「えっ、でも楓ちゃん、それって今から会うって事でしょ!私、暇だからいいよ、付き合うよ!でも、どこで会うの?そしてどうやって稼ぐの?」「とりあえず、すぐ家に来て!家に来たら詳細を話すからさ・・タクシー大通りで捕まえて即行で来てね!」「うん、わかったよ!今すぐ行くね!」「あっ!ついでに来る時にハナコとケイコとマナブ買って来てね!よろしく!それから何か飲み物もお願いね!」「うん、飲み物は何でもいいの?」「オレンジジュースでいいよ!」「うん、わかった!じゃ、待っててね、今すぐ行くから!」「あっ!大体何時頃、着くかな?」「今からコンビにで雑誌を買っていくから、30分か40分後には着くよ!」「わかった、なるべく早く来てね!」「うん、じゃあ、後で!」

楓は、電話を切るとすぐに手早く外出着に着替えると、バックを片手に外の表通りへ駆け出していった。先に近所のコンビにに寄るとハナコとケイコとマナブが両方あったので、さっそくそれを買ったのだった。それからすぐ交通量が多そうな通りを選んでタクシーを拾うとすぐに弓枝の住む自営業ビルに向かったのだった。

弓枝の住むビルに着くと、まず楓はビルの最上階の3階のベランダ部分を見上げたのだった。するとそこには弓枝の母親が洗濯をしている姿があったのだ。

なので、楓は大声で「こんにちは!おばさん!弓枝さんはおりますか?」と挨拶をしてみたのだった。すると弓枝の母親は一瞬、洗濯をする手を止めると「ああ、楓ちゃん!いるよ!待ってな、今呼ぶから!弓枝!弓枝!楓だよ!楓、来たよ!」と、これまた大声で弓枝に声を掛けたのだった。

それから弓枝の母親がベランダからビルの中に入って行くのがみえ、そのすぐ後、何やらビルの奥のほうで会話を交わすような感じが見受けられたが、その会話はハッキリとは聞き取れなかったのだ。

「楓ちゃん!弓枝が、上に上がって着てってよ!おいで!」

愛武と弓枝は食事を終えると、その日は、充分買い物も出来た事だし、もうバイバイをする事にした。―愛武もお付き合いで、【彩①】月の雫特製“豆冨・湯葉・豆乳”コースを頼んだのだった―

愛武は家に帰ると、自分の部屋のベッドの上にすぐ寝転び、しばらくボォーっと今日、一日の出来事を振り返って、一人、感慨に耽った。ベッドの上で、瞼を閉じると、すぐ瞼の裏に既に愛武にとって忘れない愛しい女、弓枝の姿が浮かんだのだった。思い起こすだけで胸が熱く高鳴った。

だが、それと同時に不安も平行して湧き上がっていた。その不安とは、大好きで愛おしい対象ではあるが、非常に金が掛かると言う事だった。しかも、短時間で湯水のように大金が消えていくのは、さすがに痛かった。そして、自分の家系の財力を持ってすれば、少しくらい借金が降りかかって来ようが、最後は何とかなるさという楽観視した気持ちも愛武にはあったのだ。それに、これほどの美しい女を忘れる事など絶対にできないと思っていた。

この時点で、愛武は何としてでもこの愛を成就させて見せると強い希望を持っていた。何度、消費者金融やサラ金に足を運ぶ事になろうとも、それ相当の覚悟は出来ていた。

元々、幼馴染であり遠い親戚でもあるガールフレンドの楓の紹介であったが、そんな事もお構いなしだった。愛武の心の中に湧き上がった嵐はもう納まりようがなかったのだ。それに楓とは最初にもお話したが、単なるガールフンドであり、一度も女としては見た事がなかったのだから。だからこそ、楓からの心よりの紹介を有り難く受け取ったのだった。

さらに愛武は、美しい向日葵の花のような弓枝の事を一時も忘れないようにする為に部屋の中を向日葵だらけにしてやると言う計画も考えるようになっていた。“明日は会社帰りに、向日葵の花の種を買おうかなぁ”愛武はマジにそう考えた。

その頃、弓枝は、家に帰ってしばらく愛武に買ってもらったプレゼントを部屋の中に並べて、その美しいジュエリー商品の素晴らしさに、暫し、ウットリとして魅入っていたのだ。―食事の最中は、もし傷がついたら困るからと思い、愛武からの愛する美しい女、弓枝への愛の贈り物の包みに一切、手を触れなかったのだ―

だが、それもつかの間で、しばらくすると、スッと立ち上がり、今日、使用したブランド物ショルダーバッグの中から携帯を取り出すと、すぐに何処かに電話を掛けたのだった。すると、すぐに電話を掛けた先の相手が電話に出た。

「はい、もしもし!」「ああ、楓!元気!あのさぁ~今日これから伝言で男、引っ掛けて一稼ぎしない?」

そして、愛武は、この次、弓枝と会うのは大分先になりそうだなぁと思ったのだった。何故なら、今日、たったの一日で既に21万4,000円ほどの大出費をしているのだ。なので、とてもじゃないが明日、明後日に、また会おうと言う気は起きないのだった。しかも、一般サラリーマンに対して、サラ金にアタックを掛けろとは、いくらなんでも、あまりにも酷い話だった。

初めてのデートで、大きな買い物尽くめだったし、だからと言って一言も弓枝のほうから“使わせてばかりで悪いから私も少し出すね”と言う言葉は聞けなかったのだ。つまり、弓枝という女は、そういう当たり前の思いやりが無い女性と判断されたのだった。

だが、そんな当たり前のような非常識と思われる立ち振る舞いに対しても、今の愛武は、スッカリ弓枝の少し派手なセンスではあるが整った優美な美貌やチャーミングで洗練された仕草に魅了されてしまって何も言い返せない状態になってしまっていたのだった。恋という毒にスッカリ満たされてしまったかのように愛武は呆けた状態に成り下がっていたのだった。

ただ、愛武は先に一般サラリーマンだと話したが、実は、ただのサラリーマンではなくて、愛武の父親は実業家で愛武はちょっとしたミニチュア版の御曹司であった。従って一般家庭のサラリーマン男性よりは遥かに裕福であり、土日の休みのどちらかは、タレント養成学校に通っているほどなのだ。そのような学校に興味を持つほど、生まれつき容姿端麗なのは、然る事乍ら 、常に知己に富み、洒落たユーモアセンスも周りの仲間から好かれ慕われる要因となっており、見逃せない愛武の特徴となっていた。

周りからみたら、このような恵まれた環境で生まれ育った愛武とこれまた実家が自営業でお嬢様育ちの弓枝は正に絵に描いたようにお似合いのカップルに見えているのは間違いなかろう。

温泉とか旅行に行く資金のの調達を巡ってサラ金に走るなんてみっともない事、いくら弓枝を好きでも、本当にそこまで出来るのか愛武は真剣に悩んでしまっていた。

弓枝がしばらく悩むような様子の愛武に対して

「だったら今度は無理しないで割り勘でもいいよ!」と言った時には愛武は一瞬、“えっ!”と思ったが、やはり、内心は嬉しかったのだ。「だったら来週でも会う事は可能だよ!」と元気よく答えたのだった。

「でも、心の準備はしておいてね!」「それって、サラ金の事かい!」「うん、そうだよ!でも、サラ金以外でも現金を用意できたらいいんだから、その方法も今度会った時二人でじっくり話し合おうよ!今度は、本当に割り勘でいいからさ!」

弓枝も珍しく相手に対して割り勘で良いと言うのだから、愛武の事を満更でもない様子だった。

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