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―そして問題の土曜日がやってきた―

愛武は弓枝と約束したとおり、駅の近くのマルイの前で待っていた。今日はクリーム色と黒いチェックのスーツ姿だった。ざます風伊達メガネもしていてお洒落に決まっている。ちょうど丸井玄関前から右前方方向にあるお金が借りれるキャッシュディスペンサーの前に立って待っていたのだ。

愛武は、右手首にはめた腕時計にチラッと目をやり、既に約束の時間から10分が経過している事に気づいた。「少し遅れるのかな?」思わず愛武はそう呟いた。すると、しばらくしてからマルイのキャッシュディスペンサーの前に立っている愛武の手持ちの鞄の中にしまってある携帯の着信音が一定のリズムを持ちながら鳴り響いた。慌てて鞄を開けて携帯を取り出すとすぐに会話の設定ボタンを押し「もしもし、愛武です!」と話すと相手からも「おはよう!弓枝ちゃんだよぉ~~ん!ごめん、今、起きたんだぁ、少し遅れちゃうから、先にマルイの中に入って私が好きそうな商品を見繕っといてよ!」と弓枝が、まるでどこかの高貴なお方のように当たり前のように命令するので愛武は驚いてしまった。

「それじゃ、君は、まだ準備もしてないの?おやおや、君から誘ったと言うのにね!体が弱いのかな?それとも夕べは徹夜だったのかな?まっ、いいや、俺は、今から君の言うとおりマルイの中に入って商品見学でもしながら待つとするよ」「うぅんとねぇ・・指輪欲しいのよダイヤの・・ピンクダイヤの指輪、いいのあったら見ておいて!定員さんのお勧めのやつ幾つか見といてね!いくらかちゃんと調べてメモしてあとで教えてね!」「それは構わないけど、後どれくらいで来れるの?」「今着替えているから一時間は見といてよ!でもそれだけあればきちんと調べられるからちょうどいいでしょ!」「わかった頑張るよ!君の為なら・・」そう答えながら愛武の胸の中には熱い物が込み上げて来た。

それは気丈な火のような激しい気性を感じさせる美女弓枝に対する生まれて初めて恋の情熱に駆られてハートが高鳴っている感じだと表現したら良いだろうか?愛武はこの世に性を受けてから、まだ恋らしい恋を一度もしたことがなかったから、この弓枝に対する思いが正真正銘の生まれて初めての感情だと言って良いと思う。告白された事は多かったが、自分から燃えて恋心を相手に抱いた事は、まだ一度もなかったのだ。なので愛武は、この生まれて初めての恋の為だったら何だって出来ると心から思い始めていたのだった。

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楓と愛武と弓枝の3人だけのパーティーは、時間が経つほどに、順調に進んでいるかのように見えていた。弓枝が買ってきたシャンパンも残り僅かとなり、ほろ酔い気分になった皆は薄っすらと頬が紅潮して綺麗なピンク色になっていた。

「君の頬っぺた、指でこうして突っつきたいくらい魅力的だよ」そう言う女性が喜びそうな甘い台詞を吐くと愛武は弓枝の頬っぺたをチョンと右手の一指し指で突っついたのだった。今日の愛武は薄緑色のブレザーにクリーム色の長丈のパンツと爽やかな好青年風の装いで弓枝の一昔前のイケイケファッション風の黒いデザイン柄の模様に黄色のワンピースと妙にマッチしていた。また、さらにザマス風の伊達めがねをしていたが、それもすごく様になっていてイカシテ見えた。

「あんた、こうしてみると、すごくいい男だね!いよぉ~~色男・・・カッコいいよ!!」突然、何を言い出すかと思ったら弓枝が大笑いしてハシャギナガラそう言って来たのだ。「愛武は楓の幼馴染で同じクラスだったけど、確かに学生時代から女子にモテモテだったよ!」楓も負けずに会話に参加しだした。

楓の格好はお誕生日の主役らしく黒いドレス風ワンピースに腰の背中側には大きなリボンが形好く蝶結びになっていた。フリルがふんだんに使用されているのもいっそう上品さと可憐さを演出していた。

「やったぁ~~!!私、モテル男って大好き、ねね!今度買い物つきあって?絶対ね!約束しよう!!来週の土曜日はどう?予定、空いてる?」

なぜ、モテル男に対して買い物を付き合えと言うのかは、よく分からなかったが、今の愛武は酔っているせいもあったが弓枝の男殺しの美貌と男慣れした洗練された仕草にスッカリ参ってしまっていたので、ハッキリ“NO!” と言う事ができなかった。

「構わないけど、予定ならその日はちょうど空いてるよ!」

お坊ちゃん刈りの貴公子のような面差しの愛武は間違いなく女性にモテルタイプだった。愛武に片思いをして沢山の女性が身の程知らずにも告白をしてはアッサリと交わされ、涙していた事がまるで昨日の事のように髣髴と蘇る。学校中のアイドルのような存在で、常に光り輝いていていたが、まだ若く女性に関心が薄かった為、どうしてもつれない態度を取ってしまったのだった。

ただ、遠い親戚に当たる楓に対しては男女の色恋の感情抜きで親身な感情を持てる間柄だったのだ。だが、最初にもお話したが、決して、ただの一度だって女として見た事はなかったのだ。愛武にとって楓は、遠い大事な親戚なだけであって、そういう対象ではない事は間違いなかった。

「わぁ~~!嬉しい、楽しみにしてるよ!」弓枝がはしゃぐと楓も遠い親戚の好として愛武にとってもお似合いの素敵な彼女を紹介できた喜びが胸イッパイに溢れ出していたのだった。

その箱は綺麗なベルの形のデザインがついた赤い包装紙で包まれていた。少し、クリスマスっぽい感じだったが、中々洒落ていて良い感じだ。しかし、良い友人であるだけの楓の誕生パーティーの為にわざわざ二つも誕生プレゼントを買ってくるとは愛武も相当に人が好いと思われる。

楓がテーブルの上でその二つ目の誕生プレゼントの箱を開けると、その中からこれまた最初の一つ目のプレゼントと同じ色の薄緑色の分厚い本のような物が出てきた。

「何、これ!」楓がそう尋ねると、弓枝が自分で持ち込んできたシャンパンを注いだグラスを片手にしゃしゃり出てきて「ねぇ、みせてよ!」とその薄緑色の分厚い本のような物を楓から取り上げたのだった。

「あっ!弓枝ちゃん!何?!」「これが何だか見てあげるよ!・・・・ううんとね、あっ、これは」そう言いながら、弓枝はその薄緑色の分厚い本をパッと開こうとしたが、中々開かなかったのだ。

「あれ、これ開かないよ・・・どうやら鍵付き見たい・・・あっ!そっかぁ!これ多分日記だよ・・さっきのこれが入っていた箱の中にきっと鍵があるはずだよ!みてみなよ楓!」「あ、本当だ!今、箱の中をもう一度見たら、鍵みたいのが入ってたよ!頭良いね弓枝ちゃん!」

箱の中から出てきた鍵は、金色の小さな鍵だった。つまり二つ目のプレゼントは鍵付き日記だったのだ。

「こんなにイッパイ、プレゼントをもらって悪いね・・有難う!」「嫌、これに毎日の出来事を書き留めて置くと良いと思ってね!多分この先、色んな事があると思うからさ・・」と少しだけ意味深な事を愛武は言うと、弓枝から鍵付き日記を取り上げて楓に渡したのだった。

別にその時、弓枝は逆らわなかったが、「私には何もないんだね!当たり前だよね、今日は楓の誕生日だから・・でも、出来たら私も何か欲しかったなぁ・・ねぇ、今日はいいから今度私に何か買って!ねっ、いいでしょ!!」と初めて出会った愛武にいきなりプレゼントを請求して愛武は度肝を抜かれたのだった。「ええ!君、初めて会って、いきなりそれはないだろ!でもね、決して駄目だと言っている訳じゃないよ!」としどろもどろと言い訳地味た事を言い出したのだ。

弓枝は既に愛武が自分に気があるのを見抜いていたかのようだった。確かに弓枝に掛かると、どの男も全てみな恋の奴隷になっていたのは確かだった。今回も、多分、例外ではないのだろう。

こんな美しい女性は今まで見た事が無い。愛武は、弓枝のきりっとした絵で描いたような小さな口元と、ちょこんと適度に形良く膨らんだアーチ型の弓のような形の美しい眉毛に見惚れてしまった。キラキラと輝く美しいアーモンド型の瞳も瓜実型の輪郭もとても素晴らしいと思った。まるで、それは一つの芸術作品だった。

弓枝の美貌に一目惚れしてしまった愛武は、是非、この芸術作品を家に持ち帰り飾りたい物だとマジに思ったのだった。自分のガールフレンドの物だろうが何だろうが、どうでも良いと思った。何故なら、愛武にとって愛とは何者からも奪い取るものだからだ。既に理性の留め金の箍は緩んでしまっていた。

「君・・・・きついけど、何故か君の言おうとしている事はよくわかるよ!」「へぇ~!あんた、話分かるじゃん!!」「よかったら、少し話さないか・・・」「でも今日は楓の誕生日だからさ・・・祝ってからね・・・いいよ話しても」「そうだな、まずは祝うか!」愛武はスッカリしばし忘れていた楓の方を振り返った。すると楓は、現在、やっと顔中に纏わり付いていた薄緑色のスライムを除去し終わった所だった。

「ごめん!すっかり忘れていたよ!」「いいのよ、もうちゃんと取れたしね!」そう微笑む楓に対して弓枝がこう話しかけた。「私さぁ、シャンパン買ってきたから、皆で飲もうよ!」「おお、気が利くねぇ!」「有難う、嬉しい、紅茶出すね!」楓がそう言うと、愛武もこう続けた。「僕もケーキとコーヒーを買ってきたから出すね!それから、はい!これもう一つのプレゼント!」

そして愛武は、後ろの方に置いてあった大きな包みから、一つの中くらいの大きさの箱を取り出した。

「そうだっけぇ?!」「うん、言った、言った!だからわざわざ遠くまで足を運んで買ってきたんだから、もっと喜んでよ!ねぇ、楓ちゃん!」「そうなんだぁ、大変だったんだねぇ・・・どうも有り難うね!」

そう言いながら、さっきこのスライムのプレゼントの主、“弓枝”に対して、しどろもどろ返答はしたものの、弓枝が思い切り楓の顔目掛けてスライムを投げつけたので、顔中に薄緑色のスライムのドロドロした物体が糸を引きながら纏わり付いた為に必死にそれを手で払いのけながら除去する作業に取り組んでいた。

楓はハッキリ言って、スライムを誕生日のプレゼントにくれとは、一言も弓枝に頼んだ覚えなど無かった。だが、弓枝がこうも強く断言するのだから、言い返しても口論になると思い、話を合わせてしまったのだ。元来、おっとりした性格の楓は、明らかに間違った事を言われても、強く対抗して意見をする事をいつも拒んでいた。

だが、いくらなんでも素手で包装も何もしていない生のスライムをそのまま顔面に投げつけてくるような乱暴な誕生プレゼントの渡し方ってあるだろうか?

楓のスライムの除去作業に苦戦する姿を見るに見かねたかのように突然声を上げたものがいた、それは愛武だった。「大丈夫かい!手伝おうか?」そう言いながら、いつのまにか愛武は、楓のすぐ傍に寄り添うように立つ格好になっていた。愛武は楓の事をさっきも話したが、別に女としてみている訳ではないが困っている人をみると、つい放って置けなくなる性分だったのだ。気づけば、いつの間にか愛武も楓と共に一緒にスライム除去作業に入っていた。楓の顔じゅうにベタベタと纏わり付いている薄緑色のスライムを手で細かく少しづつ摘んでは引っ張って取り払って行った。

「随分とお優しい事!」弓枝は、皮肉るような声色で、そう言い放つとその光景をジッと睨む様な目で見ていた。「君もブツブツ嫌味を言っていないで手伝ったらどうだ!」そう言いながら声がする方に愛武が振り返ると、そこには、これまで見た事も無いような美しく愛らしい誇り高い人を見下すような目付きの女性が黄色の黒い鮮やかな柄のデザインのワンピースを着て立っていたのだった。愛武は思わず目を見張った。「うぅ・・・」思わず、吃ってしまった、それほどまでに弓枝は美しい女性なのだった。愛武は生まれて初めて一目惚れをしてしまい、頬が思わず紅潮して しばし口が聞けなくなってしまった

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